借地権上建物の建替えに関するコンサルティング
1. 依頼の趣旨と動機
依頼者は当社の業務提携先である税理士事務所からの紹介でした。
依頼者の家族構成は
依頼者の母と姉が江東区の最寄駅 徒歩1分の大きい交差点に面した商業地域にある借地上建物(1階店舗で喫茶店を経営、2階に居住)に同居している。
依頼者は既婚し同じ区内の別のところで夫、子2人と賃貸マンションに月額20万円の家賃を支払いながら夫婦共働きで居住している。
上記の借地上の建物は築50年を超える木造2階建で老朽化が激しく雨漏り、水シミ
で土台が腐っている。シロアリの腐食もすすみ鉄筋も入っていないので地震で倒壊
する恐れがある。
2010年に建物診断でも危険と判断されているので、できれば早く建替えたい。
しかし、本件エリアは用途地域が商業地域、防火地域なので鉄筋コンクリート造か
鉄骨造の耐火建物でないと建築できない規制があるうえ、借地契約の目的は木造
となっている。
2. 依頼内容
(1)依頼者は現在賃貸であるが夫婦共働きということもありやや余裕があるので家族でここに引っ越して二世帯住宅を新築し、姉、母、と同居し、早くこの危険な状況から脱し、母を安心させたい。
(2)借地権を買い取って新築したらいいのか?承諾料を支払って立て替えたら
いいのか?地主さんとの交渉はどうしたらいいのか?
またその場合どれくらいの費用がかかるのか、どのようなものを建築すべき
なのか?
その資金調達はどうすればよいのか?について助言をいただきたい。
(3)さらにこちらの近所に祖母の家だったところがあり、そこついては父の兄弟で1/3ずつ共有で相続したが、すでに父もなくなりその持分を母が相続したが、今後どうしたらよいか助言いただきたい。との趣旨でした。
3. 依頼内容の(1)(2)から優先行うことにしました。
方法としては
(1) 借地上建物の建替えあるいは買い取りの承諾を取る。
(2) 建替えるならば借地権契約の目的を木造からS造、RC造へ変更する。
(3) 1階店舗の二世帯住宅を建築する
4. 問題点
(1) 地主は地元のお寺のから借地しているのだが近年住職が亡くなり跡継ぎがいないため、全く面識のない秋田県の住職が本山の指示でこのお寺を引き継ぎその息子と交代でこの寺を管理するようになった。住職の嫁が借地に関する交渉者となるが、借地状況を把握していないのと借地人との面識が薄いため警戒感だけが強く交渉が難航する恐れがある。
(2) 借地権を買い取り、さらに新築するには費用がかかりすぎる。
(3) 建替え承諾料及び目的変更承諾料、鉄骨造耐火建物の建築費用、ローン支払いなど費用をシミュレーションしたところ依頼者の予算を超えてしまい、このままでは地主との交渉以前に予算的に難しいことが判明した
(4) 借地権評価額から換算して借地目的変更と建替え承諾料で約600万~700万円、解体建築総額はハウスメーカーの相見積もりで7000万円以上かかり
総額で8000万円近くの費用負担は厳しい。
(5) 借地権底地権の交換をするには土地面積が26坪と小さく不可能。
■借地権に係る本件土地の査定評価と借地権評価詳細を試算する。
【簡易査定】
※借地権割合70%
■借地権関係詳細
○更地実勢価格 612千円/㎡×88.3㎡=54,077,902円 査定(土地比準表)
○底地価額 54,077,902円×30%= 16,223,706円
○借地権価額 54,077,902円×70%= 37,854,531円
○譲渡承諾料 37,827,720円×10%= 3,785,000円 借地権価格×10%程度
○借地権買取価格
37,854,000円-3,785,000円=34,069,000円(借地権価格-譲渡承諾料相当額)
○全面増改築承諾料
54,077,902円 ×5%= 2,704,000円 更地価格×3~5%
○借地条件変更承諾料
54,077,902円 ×10%= 5,407,790円 更地価格×10%
○借地権更新料
54,077,902 ×5%=2,704,000円 更地価格×5%
5. コンサル内容
(1) まず予算の部分をクリアにしなければならないということで、建替え承諾料を減額するために、建築物構造をS造ではなく耐火木造建築にする。
(2) 承諾料の算定基準の交渉は路線価あるいは借地権表額ベースで行い極力抑える
(3) 建築費用はS造から耐火木造にすることと延床を工夫することで15%抑える。
(4) 1階店舗には銀行ATM専用に賃貸し水回り設備を入れずコストを抑える
(5) 本件エリアは最寄駅1分の大規模交差点に位置しているためATM店舗の需要を調査しテナントを確保する。
6. 結果
以上の方策と借地権承諾交渉がスムーズに運んだことにより、総額予算が
約5420万円まで圧縮でき、金融機関で4500万円30年のローンで借地上建物を新築することに決定した。
【内訳】
○建替承諾料・・・270万円(更地価額の5%)
○延床面積50坪 総事業費5000万円
○解体費150万
(6) 依頼者は現状20万円の家賃であったが、これにより依頼者の月額の負担は
ローン支払い月額16万円、地代2万7000円を入れても20万円に収まる。さらに店舗賃料(10万円)はローンの支払いに充当し姉と母より家賃として入金してもらうことで2028年の更新時の更新料(160万~270万円)の積立とすることにした。
■ご相談の概要
相談者:横浜市在住のご夫妻 夫A55歳 妻B54歳
紹介相談日:平成26年6月頃
〇相談者の状況
ご夫妻は横浜市都筑区の賃貸マンションに居住
夫は進学塾の講師を契約社員として勤続30年、妻は専業主婦。
〇妻Bのご両親の状況
ご両親は健在であり、法定相続人は妻Bとその姉である。
妻Bの父親が元市議会議員であり北海道の資産家であり、不動産を保有しているが3年程前に所有土地を公的機関に売却したため現金資産1億円を取得している。
●概要
相談者であるご夫妻ABは年齢のこともあり、終の棲家として自宅購入を希望している
ご両親も高齢となり、妻Bが自宅購入するなら資金の一部を援助してもよいというご両親からの意向がありました。
そこで弊社に相続と贈与及び自宅物件(マンション)の購入相談に来られました。
ついては、物件の紹介と相続予定の財産の相続評価及び予定相続税の現状把握と住宅取得資金贈与と相続時精算課税についての説明と具体的な契約書関係をアドバイスさせていただきました。
■相談内容
1. 終の棲家としてのマンションを希望するが紹介してほしい。
2. 住宅取得資金の調達について夫Aは銀行ローンを借りられるのか?また資金を親から援助してもらうにはどのようにしたらよいのか?
3. またもし相続税や贈与税がかかるのなら、なにか対策は必要なのか提案してほしい。
4. 住宅取得資金贈与に税金がかからないと聞いているがなにか必要な要件はあるのか?
5. 両親は健在ではあるが高齢のため資産を娘に引き継ぎたいという意向があるので、効率的な生前贈与をするにはどのような手続きが必要なのか相談したい。
●相談者ABの現状の資産 現金預金 約1,000万円以上
●ご両親の現状資産 不動産 約3,000万円 現金預金 約8,000万円
債務無し 純相続資産額:約1億1000万円
■Bの父親の現状の財産評価分析
財産の評価をしたところ下記の通りとなる。 (表1)
相続税額を試算したところ下記の通りとなる。 (表2)
■問題点
1. ご夫妻が住宅取得資金するうえで、夫が契約社員ということで銀行ローンが厳しい
2. 単純に贈与を受けると多額の贈与税がかかってしまう
3. ご高齢であるご両親の資産ポートフォリオに現金が多い
4. お父様が高齢のため認知能力が心配になってきているので急ぎたい。
■対策のご提案
相談者の主目的である自宅購入資金の調達を相続対策も含めて考えるために現状分析をふまえ下記のご提案をしました。
1. 住宅資金調達のための銀行ローンの比率を極力下げ融資できる銀行を提案する
2. ご両親の現金資産の一部を娘(相談者:妻)に生前贈与することにより相続資産を減らし相続評価額を圧縮する
3. 住宅取得資金贈与の特例、相続時精算課税の特例が使える要件を満たす物件の紹介
4. ご両親の地元の顧問税理士と連携
■田園都市沿線の青葉台の中古マンションを提案
① 購入物件:価格3400万円 平成8年2月築 鉄筋コンクリート造 3LDK68㎡
② 契約締結日:平成27年3月〇日
③ 資金調達:自己資金500万円 住宅取得資金目的の贈与1,900万円
銀行ローン:1,000万円 期間20年 金利1.2% 合計3,400万円
諸費用:95万円(自己資金)
※住宅取得資金贈与の特例 要件を満たしている
1 建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、その取得の日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたもの
(注) 耐火建築物とは、登記簿に記録された家屋の構造が鉄骨造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造などのものをいいます。
■対策の実行
1. 住宅取得資金贈与特例及び相続時精算課税の特例の受贈者要件をすべて満たしているので上記特例の※居住用家屋要件(一般住宅)をすべて満たす上記中古マンションを提案し購入を決断した
2. 贈与資金1,900万円については下記の通り振り分けて贈与税の特例を提案する。
住宅取得資金贈与特例1,000万円
相続時精算課税 900万円
3. 相続時精算課税特例と贈与税の比較
単純贈与の場合、900万円の贈与税は税率40%控除125万円なので
(900万円-110万円)×30%-90万=147万円の贈与税がかかる
これと比較して上記相続税計算表のとおり相続税の実効税率は12.1%なので相続時精算課税が贈与税より有効と判断しました。
4. 贈与については、正式に贈与契約を締結し、公証人役場にて確定日付を取りました。
5. 確定申告についてはご両親の地元税理士と協議し一任することになりました。
6. その他として毎年110万円の暦年贈与は使えない旨を説明いたしました。
■対策の効果
【対策後】 (表3)
1. 相続税の効果
1, 900万円贈与分のうち相続時精算課税分900万円を戻すことにより、相続時の評価額は110,095千円→100,095千円減少し
相続税額は314万円→約253万円圧縮となります。
※表2・表3より
2. 贈与税の効果
【対策前】
1,900万円を贈与した場合の贈与税額は
(1, 900万円-110万円)×45%-265万円=540.5万円
【対策後】
住宅取得資金贈与特例 1,000万円
相続時精算課税特例 900万円
上記適用により贈与課税価格は0円、贈与税額は0円
※住宅取得資金贈与の非課税限度額
■対策実行の所見
今回は、相談者の希望に見合うマンションが見つかり無事契約できたことは大変よかったと思います。資金調達も父親からの贈与がスムーズにいき贈与税もかからず決済後すぐにお引越しなされて現在居住中です。
最寄駅から徒歩4分、高台にあるので眺望もよく、喜んでいただいております。
ローン審査では苦労しましたが、夫の勤続年数が長かったことと借入れ金額が少ないということもあり無事決済ができました。ローン金額が少ないので月々の支払も今までの賃料より低いので、生活に余裕ができました。
また、贈与についてはお父様が高齢になっており文書などを読むのが面倒になっているということで説明するのが難しかったですが地元の税理士と連携することによってスムーズに事が運び、お父様も娘に生前贈与ができたことを喜んでいらしたのでよかったと思います。
【コンサル内容】
本件を解決する方法として、以下のスキームを提案した。
(1) 不動産流動化法にもとずく不動産ファンド特定目的会社(TMK)を設立しそこに、本件ビルを売却し、その資金を遺産分割金として分配する。
(2) TMKの資金調達は特定社債を発行し外資系投資銀行が約19億5000万円で引き受ける。
(3) Aの法人が単独1社でこのTMKに優先出資を行い、このビルの家賃収入の一部を配当として、全額受け取る。
(4) Aの法人は本物件のプロパティマネジメントとして管理を行う。
上記、個人不動産のファンドを組成する証券化スキームを利用した個人資産のソルーションを提案した。
【問題点】
ファンドに組成するうえで以下の問題が浮上していた。
(1) 昭和45年築のビルであり建物診断の耐震基準(PML値)や屋上看板が建築基準法を満たしていない。道路にはみ出ている構築物(シャッターボックス、高圧キャビネット)があるなど、建物の問題。
(2) 英会話教室テナントが倒産や、その他テナントの撤退など、賃料収入の変動による資金調達額の変動。
(3) 金融商品取引法の改正による、スキーム自体の見直しやアセットマネージャー(AM)、プロパティマネージャー(PM)の基準が厳しくなるなど法的問題。
※(このため、信託受益権を使った匿名組合スキームを資産流動化法に基づくスキームへ変更し、PM、AMを専門会社に依頼した。)
(4) 他の相続人が外資系金融機関に対してハゲタカのイメージを強くもち、相続不動産を彼らに乗っ取られるのではないかという漠然とした不安があり、納得させる説明が必要であった。
(5) このスキームを実行するにあたり、当初かかる多額の資金のブリッジローンの調達が必要であった。ファンドに移す前に所有権を相続人A一人に移さなければならないため、事前に遺産分割金を支払わなければならないためである。
(6) 当時世界経済がサブプライムローン問題で不動産ファンドの状況が変動し、外資系金融機関が不動産融資から撤退するという傾向があり、本物件も資金調達ができなくなる危険性がでてきた。
※(実際に、本件において当初社債引き受けを予定していた金融機関M社が決済の2カ月前に撤退し、急遽、金融機関L社に変更せざるを得なかった。)
当社及び外資系金融機関M社、L社、弁護士事務所、会計事務所、建築設計会社との専門家集団との連携によりすべての問題をクリアした。
【依頼人及び相続人に関する成果】
(1) 本スキームを利用することにより、遺産分割金は長兄1億円、他の3名が約8700万円となり飛躍的に増えすべての相続人は遺産分割に円満に合意した。
(2) 依頼人Aは本物件の所有会社である、TMKの優先出資者として、年間3000万円以上の配当を受けるに至り、手取額は以前の3倍となった
(3) 依頼人Aは引き続き本物件を管理することができた。
(4) 依頼人Aは不動産すべてを相続したため本物件の空地部分約35坪を完全所有地とし、ここにビルを建築し収益を得る計画である。
(5) 依頼人A及び他の相続人は10億円の負債から解放された。
(6) 5年後は本物件を売却し社債償還をしなければならないが、負債はノンリコース(非遡及)のためAの負債は解放されている。